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2021.02.09

Kaggleでの経験を業務に活かし、病気で苦しむ人々を救いたい

世界最大のデータ分析コンペのプラットフォームであるKaggle(カグル)で昨年9月から12月にかけて開催された「Google Research Football with Manchester City F.C.」というコンペで、デジタルイノベーション推進部の森井正覚が1,138チーム中12位となり金メダルを獲得した。この金メダルの獲得により、森井は世界に1,500人程度しかいないKaggle Masterの称号を得て、世界ランク177位となった。森井がコンペに本格的に挑戦したのは、ジョブ・ポスティング制度を利用してデジタルイノベーション推進部に異動し、データサイエンティストとしての実務経験を数ヶ月積んだ2018年11月頃からである。
そこで、森井と上司の棚橋健司に、コンペに参加した目的や金メダル獲得の意義、業務で成し遂げたいことなどを聞いた。

PROFILE

デジタルイノベーション推進部 森井正覚

大学にて統計学・計算機科学、大学院にて機械学習を専攻。
2011年4月、アフラックに新卒入社、経営数理部数理企画課に配属。収支予測計算業務、将来収支分析業務に従事。
2016年1月、経営数理部バリュエーション課に異動。決算業務、再保険業務に従事。
2018年7月、ジョブ・ポスティング制度によりデジタルイノベーション推進部デジタル技術支援課に異動。データサイエンティストとしてデータ分析業務に従事。

PROFILE

デジタルイノベーション推進部
デジタル技術支援課長 棚橋健児

2003年4月 アフラック入社
2003年4月 システム開発部
2012年1月 成長戦略推進部
2018年1月 デジタルイノベーション推進部デジタル技術支援課長

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Kaggle Masterの存在が企業の革新性の評価につながる

―Kaggleについて教えてください。
森井の業績:世界ランク177位/152,245人中森井の業績:世界ランク177位/152,245人中
森井:Kaggleとは、Google傘下の世界最大のデータ分析コンペティション(コンペ)のプラットフォームです。常に複数の賞金付きコンペが開催されていて、世界中のデータサイエンティストがデータ分析の問題に取り組み、競い合い、学び合う場所です。
仕組みとしては、企業などがデータ分析に関する問題をKaggleに持ち込み、コンペの参加者がその問題に取り組みます。将来取引を行うであろう顧客の予測、特定の疾病が発症しているかどうかの検出など、何かを予測する問題が多いです。
参加者の評価制度は、大きく3つに分けられます。
まず1つ目は、コンペ毎に付与されるメダルです。

付与される基準はコンペの参加チーム数によって異なりますが、1,000チーム以上が参加するコンペでは、金メダルが上位10チームで、500チーム増える毎に1チームずつ増加します。加えて、銀メダルが上位5%のチーム、銅メダルが上位10%のチームに付与される基準となっています。
次に、称号制度があります。これは、複数のコンペに参加して得られたメダルの数で決まります。一番上はGrandmasterで、金メダル5個の獲得が必要になります。二番目のMasterは金メダルが1個、銀メダル以上が2個必要です。最後に、ポイントランキング制度があります。これは、同じメダルでも順位が高いほど、チームの人数が少ないほど高ポイントが貰える仕組みになっています。

棚橋:Kaggleは、データサイエンティストを抱える多くの企業から注目されています。Kaggleのコンペで培われる経験が会社の技術力向上に繋がることを評価し、業務時間を利用したKaggleへの参加を認める制度を設けている会社もあります。
統計学や機械学習など、専門性の高い分野を学んだデータサイエンティストの多くは、プロフェッショナル集団に身をおいて、お互いに刺激を与え合いながら仕事をしたいと考えています。そのため、Kaggleの成績優秀者は、AI開発で最先端を走るIT企業に所属しているケースが多く、生命保険会社にいることは非常に稀です。
今回、森井はコンペで金メダルを獲得し、世界で約1,500人、日本においては100~200人程度しかいない(2021年1月1日時点)と言われるKaggle Masterの称号を得たわけですが、これほどの優秀な成績を収めたデータサイエンティストがアフラックに所属していること自体が当社のAIに対する取り組みの本気度や革新性のアピールにつながると考えています。

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ジョブ・ポスティング制度で異動した組織にスキルを磨いて貢献したい

―いつからKaggleのコンペに挑戦し始めたのでしょうか?

森井:Kaggleの存在を知ったのは5年ほど前になります。しかし、その時はコンペに参加するというよりは、その中で行われている議論などからデータサイエンスを学ぶために活用していました。コンペに本格的に挑戦したのは、ジョブ・ポスティング制度を利用してデジタルイノベーション推進部に異動し、データサイエンティストとしての実務経験を数ヶ月積んだ2018年11月頃からになります。ただし、実務経験がほとんど無い当時の私からするとKaggleにいきなり参入するのは敷居が高いと感じたので、日本版KaggleといわれているSIGNATEからはじめました。SIGNATEで複数回入賞することが出来たので、2019年4月頃からKaggleに本格的に取り組むようになりました。
大学では統計学とコンピューターサイエンスを、大学院では機械学習というAI技術のコアとなる部分を学んでいたので、社内でこれらのスキルを活かせないかと長い間考えていました。だから、私にとってデジタルイノベーション推進部への異動は念願だったのです。そこで「せっかく機会を得たのだから、業務に活かせるデータサイエンスのスキルを磨きたい」と考え、Kaggleへの参加を決意しました。Kaggleは業務に近い形でデータ分析を行うため、実践的に学べたことは大きな利点でしたね。また、評価制度があることで、自分のスキルを客観的に把握できた点も、熱意を持って取り組めた要因の一つだと考えています。

―金メダルを獲得したコンペで取り組んだ内容や、成果につながった要因について教えてください。

森井:私が参加したコンペは、サッカーのゲームをするAIの強さを競うものでした。1試合が3,000ステップに分けられ、ステップ毎に選手に対してパスやシュートなど、とるべき行動を一つ選ぶAIです。様々なチームのAIと対戦を繰り返し、その勝敗結果によって順位が変動します。参加者のすべての試合の結果は公開されていたため、私は強いチームのAIの行動を真似る(予測する)アプローチをとりました。試合の状況(選手やボールの位置等)からモデルで使用する特徴量を作る際は、サッカーを定量的に分析している論文等を参考に、1,154個も特徴量を作成しました。この多くの特徴量により、試合の状況を上手く表現できていたことになると考えております。
当初、コンペは個人参加でしたが、上位陣はチームを組む方が多く、私も2020年8月頃からチームでも参加するようになりました。今回のコンペでは、私と同様のアプローチをとる米国の方とチームを結成しました。互いの知識や経験を持ち寄り、活発な意見交換をしながら取り組むことで、このような成果を生み出せたと思います。

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“自分を創る。未来を創る。”の実践

―Kaggleのコンペに参加して得た経験は、業務で具体的にどのように活かされていますか?
森井:今はKaggleでの経験を業務に活かし、業務での経験をKaggleに活かすという、理想的な好循環によりデータサイエンティストとしてレベルアップできていると感じています。今回参加したコンペはAI同士を戦わせてスコアを競うもので、Kaggleにおいてもほとんど前例がない問題でした。そんななかで、自分なりのアプローチを考えて、結果を残すことができました。データ分析は、論理的思考、多面的志向や直感によって生み出された仮説をプログラミングによって検証する作業です。コンペで自分の思考力や実行力が客観的に認められ、データサイエンティストとしての自信がついたと思います。
また、データ分析は、仮説検証のサイクルをいかに多く、早く回すかが成果の鍵となります。業務においても単純に一つの結果を出せばよいわけではなく、様々な結果を早く計算し、きちんと把握することを念頭に置きながら臨んでいます。
―今回の取り組みと成果にはどのような意義があると思いますか。

棚橋:アフラックの人財育成プログラムでは、自らの成長を通じて“自分を創り”、個々人の成長が会社の“未来を創る”ことにより、アフラックの持続的成長を実現させることをコンセプトとして掲げています。今回、森井が業務を効率よく終わらせて、創出した時間で自己研鑽に取り組み、Kaggleで金メダルを獲得するという形でこのコンセプトを実践してくれたことを嬉しく思っています。デジタルイノベーション推進部では他にもお客様フォローコールの最適化に関する研究成果を論文として発表したメンバーもいます。そうした自己研鑽を通じて、お互いに切磋琢磨できる環境が一層整えばいいですね。

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データ分析を活用して病気で苦しむ人々を救いたい

棚橋:自己研鑽で培ったデータ分析の知見やスキルをぜひ業務で活かしてほしいと思っています。特に、Kaggleで培った広い視野は重宝されるでしょう。データ取得にあたっては社内のデータだけにとらわれず、世の中にある様々なデータを集めて分析してほしいです。また、生命保険会社で使われているAIのアルゴリズムは、限定的なものになりがちですが、普段の業務では発想しえないようなアルゴリズムを導入して、企業の価値を高めていってほしいと思います。
あとは、チームで働くということです。アフラックのデータサイエンティストは、個人で働くことが多いのですが、今回、森井は多国籍のチームで協業し、結果を出してくれました。そうした経験を、ぜひ実務にも活かしてほしいと思っています。デジタルイノベーション推進部だけでなく、他部門の方々も含めたチームで大きな成果を上げられればいいですね。
昨年からデータドリブン文化の醸成に向けた取り組みを開始しており、データアンバサダーにも多くの社員が手を挙げてくれました。今後は、誰もが使えるデータの整備を行うことが大切だと考えています。それぞれの現場で持っているデータを他部門のデータと組み合わせて活用できれば、アフラックにおけるデータ活用はもっと進むと思います。

森井:私は、データ分析を活用して、病気で苦しむ人々を医師・看護師・薬剤師の方とは違う形で救うことができたら、と考えています。数学は実社会ではあまり役に立たないというイメージをお持ちの方もいると思いますが、そうではないということを実際に世の中に貢献していくことで証明したいですね。

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